日本バーチャルリアリティ学会が開催している、「VR技術者認定試験」を受験してきました。
今回は「セオリー編」ということで、VRの定義や歴史、人間の認知機構やVR世界の構築方法などの基礎的な理論についてでした。
なので、合格したからと言って、UnityやUnrealでVRアプリが作れるようになる、というものではありません。
勉強してみてまず思ったのが、VRの歴史の長さと最近の急激な発展についてです。
VRという用語自体は1984年くらいからなのですが、世界初のHMDは1968年に出たそうです。トラッキングは機械式(HMDに棒が付いていて、その動きを読み取る)ですし、描画内容はワイヤーフレームでした。そのような研究室レベルの大掛かりな装置だったものが、今では安いものでは2万円程度で誰でも入手できるようになりました。Oculus DK1がブレイクスルーになっているとは言え、それまでの研究のバックグラウンドが知ることができたのはとても勉強になりました。
そして、VRの研究範囲と応用範囲の広さです。
現状、VRといえばHMDとトラッキング可能なコントローラー、という認識が広まっていますが、本来のVRが対象としているものは、人間の感覚全てを入力・出力のインターフェイスとして用いて、現実と同じような体験を作り出すものです。教科書には「神経に直接電流を流せば全ての感覚を再現できる」といったような、普通にイメージするVRの開発からは想像できないようなことがたくさん書いてあります。
つまり、現状のHMDが対象としている「頭の動き」「コントローラーの動き」を入力として「画像」「音声」を出力とするシステムは、まだまだ人間の感覚のほんの一部しか使用しておらず、すべての感覚を活用できるようになれば今とは比較にならないほどリアルなものが作れる、ということを知ってワクワクしてきました。(嗅覚を刺激するものや、触覚を再現するようなものも少しは市販されるようにはなりましたが)。
また、セオリーコースでかなりの部分を占めていて難解だったのが、人間の感覚器についてです。視覚ならば網膜から入ってきた光が脳の中でどのように処理されて認識が行われるかや、前庭感覚(平衡感覚)を司る器官とその感度など、かなり難しい医学的な用語で細かなところまで出題されます。正直、これってVR開発に役に立つの?と最初は思っていたのですが、前述の「人間の感覚全て」に対して作用するシステムがVRだということを考えると、やはり必要な知識だと思い直しました。単純に今UnityでVRアプリを作る、という目的ではなく、VRでプレイヤーにどのような体験を与えるのか、という視点でも、非常に有効な知識でした。
さらに、人間の感覚器について勉強すると「現実はリアルなのか」という疑問に行き当たります。人間の感覚器は、計測範囲がそれほど広いわけではありません。可視光線の範囲は狭いですし、聞こえる音の周波数も限られています。嗅覚も犬や猫にかないません。
つまり、現実世界で体験していることは、すでに人間の感覚器という性能の限られたデバイスを通しているので、VRと言える、ということです。なので、「現実と区別がつかないVRシステム」は、原理的には実現可能ですし、すぐそこまで来ていると感じます。
ということで、自分の中でのVR開発の認識が「HMD用のアプリ開発」から「現実を再現するテクノロジー」というように変化しました。
さて、ここからは勉強方法と試験の対策についてです。
まず試験の1ヶ月前くらいに講習がありますが、これは出たほうがいいです。要領のいい人ならば、教科書と過去問(サイトに全て載っています)で勉強すれば合格すること自体は難しくないと思いますが、各分野への興味ややる気、といった面では講習で実際に話しを聞くのが最適と思います。興味が沸かないと、教科書は読むのがツライ内容です。
試験対策ですが、設問の全ては教科書から出ます。どの部分が出るかは過去問を解いてみるとわかります。けっこう細かい数字や、ひっかけっぽいちょっとした用語の違いなどが選択肢に出てくるので、過去問を解く→教科書を読む、のループを行えば得点は取れると思います。過去問がそのまま出題されるのも多いです。そして教科書は通読することをおすすめします。
自己採点の結果によれば合格しているんじゃないかと思いますが、結果発表は来年なのでドキドキしながら待ちます!